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文化庁「AIと著作権」の考え方とチェックリスト ― 水素事業者はまず「自社の立場」を確かめる

生成AIと著作権について、文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)と「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)を公表しています。本記事はその原文に沿って、水素関連の事業者が自社を「AI利用者」と見るか「AI提供者」とも見るかを見分け、公開前の工程に落とすところまでを中立に整理します。一次資料自身が法的拘束力を持たないと明記しているため、断定的な法的評価は述べません。効果効能も扱いません。

2026-09-06 | 大河内 洋(スマートマーケティング株式会社 代表取締役)× AI権利・法令
対象:経営・広報・販売の方はじめての方OK所要:約7分

当サイトは中立の情報整理を目的とし、特定のAIサービス・水素製品を推奨も批判もせず、順位づけもしません。本記事は文化庁が公表した資料の原文に沿った紹介であり、法律相談ではありません。一次資料自身が「本考え方自体が法的な拘束力を有するものではな」いと明記しているため、当サイトからの断定的な法的評価や見通しは述べません(参照日 2026-09-06)。個別の判断は弁護士等の専門家にご確認ください。水素関連製品の多くは非医療機器(雑貨)であり、本記事は効果効能を扱いません

チェックリストは立場ごとに読む。水素事業者は社内で使うだけなら利用者の側、AIを組み込んだ機能を外部に出すと提供者の側にも当たり得る四つの分類を縦に並べ、水素関連の事業者が該当しやすい二つの層を色つきで示した図。一つの事業者が同時に複数の分類に当たる場合があることを注記している。まず「自社がどの立場か」を確かめる(文化庁チェックリストの分類)グレー=多くの水素事業者は通常あたらない層/色つき=あたり得る層AI開発者データを集めてAIモデルを学習・構築する側。学習データの集め方が論点になる層。AI提供者AIを組み込んだサービス・機能を外部に提供する側。自社サイトの商品Q&A、顧客向けチャットなどを出すと、この層の項目も見ることになる。AI利用者(業務利用者)事業活動でAIを使う側。広告コピー・商品ページ・SNS・社内資料の作成など、多くの水素事業者がまず当てはまる層。業務外利用者(一般利用者) 事業活動以外でAIを使う側。一つの事業者が同時に複数に当たることがある。当たる分類すべての項目を見る。
図:文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」は当事者(ステークホルダー)の分類ごとに読む構成になっている。出典:文化庁著作権課「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)の分類に基づき作成。

① これは何か(文化庁が出している2つの資料)

文化庁は公式ページ「AIと著作権について」で、生成AIと著作権に関する資料を公開しています。以下は、そのページと掲載PDFの原文の記載です。

  • 「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年〈2024年〉3月15日/文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会)。同ページには、生成AIと著作権の関係に関する「判例及び裁判例の蓄積がないという現状を踏まえて」考え方を整理し周知するため、有識者へのヒアリングやパブリックコメントの募集等を実施しながら議論を行って取りまとめた、と記載されています。
  • 「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年〈2024年〉7月31日/文化庁著作権課)。上記の考え方の解説資料として、望ましいと考えられる取組みを「生成AIに関係する当事者(ステークホルダー)の立場ごとに分かりやすい形で紹介する」ものと説明されています。

位置づけについては、「考え方」本体の冒頭に「本考え方自体が法的な拘束力を有するものではなく、また現時点で存在する特定の生成AIやこれに関する技術について、確定的な法的評価を行うものではない」と明記されています。チェックリストにも、記載の方策は「全て記載どおりに実施しなければ直ちに……法的責任が生じる」ものでも「全て実施すれば法的責任を何ら問われない」ものでもない旨の注意書きがあります。つまりこれはお墨付きではなく、自分で確認するための地図です。

読む順番は「立場」から

チェックリストは、当事者をAI開発者/AI提供者/AI利用者(業務利用者)/業務外利用者(一般利用者)に分けて構成されています(上図)。そして、「一の事業者(又は個人)であっても、生成AIに対する関わり方により、同時に複数の分類に該当する場合があります」とし、その場合は該当するいずれの分類も参照するよう求めています。水素関連の事業者は通常まず「AI利用者(業務利用者)」ですが、AIを組み込んだ機能を外部に出すと「AI提供者」の項も読む対象になります。ここを取り違えると、見るべき項目が丸ごと抜けます。

② 水素業界での使いどころ(場面別に、原文のどの項目を見るか)

水素関連の広報・販売でも、生成AIは画像・コピー・SNS・技術資料に使えます。場面ごとに「立場」と「原文で対応する項目」を対応づけると、確認漏れが減ります(いずれも効果効能の表現は入れないことが前提です)。

水素事業者の場面自社の立場原文で見るところ(要点)
商品LP・広告バナーの画像/コピーを生成するAI利用者利用に先立って既存の著作物と類似した生成物になっていないか確認(インターネット検索・画像検索の活用など)。侵害の要件は「類似性」と「依拠性」の双方とされています。
他社カタログや既存写真を読み込ませて作り直すAI利用者既存の著作物を指示として入力する場合(Image to Image 等)、「入力した既存の著作物と類似する生成物を生成させる」目的だと享受目的の併存にあたるとして、法第30条の4が適用されない場合がある、とされています。
生成した図版を展示会資料・SNS・商品ページに出すAI利用者「生成」と「利用」では判断が異なり得るとされています。私的使用等の権利制限規定の範囲で生成が適法に行える場合でも、配信・複製物の譲渡等の利用は範囲外となる場合が多いと整理されています。
自社サイトに商品Q&A・問い合わせチャットを設置するAI利用者+AI提供者提供する側としては、生成AIを利用している事実や想定される適切・不適切な使用方法の情報提供、および著作権侵害となるような利用を防ぐ観点での利用規約等の整備が挙げられています。
社内資料・製品情報をAIに読み込ませて回答させる(RAG等)AI利用者+開発・提供側の論点生成AIへの入力用に既存の著作物を含むデータベースを作成する場合で、その創作的表現を出力させることを目的とするものは、享受目的の併存にあたるとされています。
AI生成物を自社の素材として取引・許諾の対象にするAI利用者著作物性は「創作意図」と「創作的寄与」で判断されるとされ、関係するステークホルダーへの適切な説明と、生成過程を確認できる状態の確保が挙げられています。

表の右列はいずれも文化庁資料の記載の要約であり、個別の事案がどう判断されるかを当サイトが示すものではありません。「考え方」本体には、著作権法の解釈は「本来、個別具体的な事案に応じた司法判断によるべきもの」とも書かれています。

③ 第一歩(今日からの3ステップ)

  1. 自社の「立場」を1枚に書き出す。広報・販売でAIを使っているだけなら「AI利用者」。自社サイトのチャットや商品Q&AなどAIを組み込んだ機能を外部に出しているなら「AI提供者」も加わります。該当する分類をすべて挙げ、それぞれの項目を見る対象にします。
  2. 公開前に「似ていないか」を確認し、確認したことを残す。生成物の利用に先立って既存の著作物と類似していないかを、インターネット検索・画像検索などで確認します。あわせて、使ったプロンプト・確認した人・日付を残し、生成過程を後からたどれる状態にしておきます。
  3. 使っているAIサービスの規約と、学習済みモデルの情報を日付つきで記録する。利用規約等で禁止・制限されている使い方(他人の著作物を入力することの禁止等)を確認し、確認日とともに残します。社内では、生成物の著作物性の話と、既存の著作物の権利侵害の話は別の問題である点を、担当者間で一度そろえておきます。
要点:「立場を決める → 出す前に似ていないか確認する → 確認したことを残す」。この3つは、文化庁資料の記載を自社の工程に置き換えたものです。難しく考えず、まず1本の広告素材から通してみるのが早道です。

④ 絶対の注意点(★法令ガード)

著作権の確認を通っても、それだけでは広告として出せません。水素業界では薬機法・景品表示法・ステマ規制をセットで確認してください。生成AIは、頼んでいなくても効能表現や最上級表現を書いてしまうことがあります。

  • 効能表現をそのまま使わない。水素関連製品の多くは非医療機器(雑貨)で、効果効能は標榜できません。AIが出した「効く・デトックス・治る」といった語は、著作権の確認とは別に、必ず落としてください(→水素と法律)。
  • 根拠のない最上級表現を入れない。「No.1」「世界初」などをAIに書かせない。景品表示法上の問題になり得ます。
  • 体験談風の文章をAIに作らせない。実体験でないものを体験談として出さないでください。広告は広告と分かる表示にします(ステマ規制)。
  • 生成物を実測データのように見せない。生成した図表・写真風画像は「イメージ」と明記し、測定値や研究結果のように扱わないでください。
  • 最後は人が承認する。著作権(類似の確認)・表示規制(効能表現の有無)の両方を人が確認してから公開し、誰がいつ確認したかを残します。

よくある質問

文化庁の「考え方」に沿っていれば、法的に安全ということですか?
いいえ。一次資料自身が、この文書は「公表時点における小委員会としての一定の考え方を示すもの」であって「本考え方自体が法的な拘束力を有するものではな」いと明記しています。チェックリスト&ガイダンスにも、記載の方策を「全て実施すれば法的責任を何ら問われないといったことを意味するものではありません」と書かれています。個別の判断は弁護士等の専門家にご確認ください。
学習データに何が入っているか分からないのに、侵害になることがあるのですか?
文化庁の「考え方」【概要】では、著作権侵害の要件は既存の著作物との「類似性」と「依拠性」の双方であり、開発・学習段階で当該既存の著作物が学習されていた場合は、AI利用者が既存の著作物を認識していない場合でも通常は依拠性があったと推認される、と整理されています(学習に用いられた創作的表現が出力される状態になっていないことを主張・立証できる場合の留保も併記されています)。だからこそ、出す前に既存の著作物と似ていないかを確認する工程が要る、という順序になります。
AIで作った画像は、自社のオリジナル素材として権利を主張できますか?
一律には決まりません。【概要】では、人が何ら指示を与えず(又は簡単な指示にとどまり)「生成」のボタンを押すだけでAIが生成したものは著作物に該当しないと考えられる一方、人が「道具」としてAIを使用したと認められれば著作物に該当し、判断は「創作意図」と「創作的寄与」によるとされています。人がAI生成物に創作的表現といえる加筆・修正を加えた場合、通常その部分には著作物性が認められる、とも書かれています。
「作風が似ている」だけでも問題になりますか?
【概要】では、著作権法は「創作的表現」を保護し「アイデア」は保護しないため、「作風」がアイデアである場合はそれが共通しても著作権侵害とはならない、と整理されています。他方、特定のクリエイターの少量の作品群が「創作的表現が共通する作品群」となっている場合には、その創作的表現が直接感得できる生成物の生成・利用は著作権侵害となり得る、とも書かれています。
自社サイトにAIの商品Q&Aを置くと、立場は変わりますか?
変わる場合があります。チェックリストは、一の事業者であっても生成AIへの関わり方により同時に複数の分類に該当する場合があり、その場合は該当するいずれの分類の「期待される取組み」も参照するよう求めています。社内向けに使うだけなのか、AIを組み込んだ機能を外部に提供するのかで、見るべき項目が増えます。
※本記事は中立の情報整理を目的とし、法律相談ではありません。記載は文化庁が公表した資料の原文に基づく紹介であり、当サイトによる法的評価・見通しではありません。一次資料自身が、公表時点の考え方を示すものであって法的拘束力を有しない旨を明記しています。個別の判断は各出典および弁護士等の専門家にご確認ください。特定のAIサービス・水素製品の推奨や順位づけは行わず、効果効能を示すものでもありません。
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