無料公開 第1部(危機編)
【2026年最新】薬機法違反をやめよう!
水素&健康業界AIインサイト 編集部
伝えたいことは、ひとつです。業界全体で、薬機法違反をやめませんか。
いま、二つのことが同時に起きています。ひとつは、水素をめぐる事故が公的な記録として残ったこと。もうひとつは、AIがサイトを丸ごと読むようになったことです。記録は取り下げられず、表示は文字として残っている限り拾われます。この二つが重なったとき何が起きるか──私たちは、この業界にいつ一斉の取り締まりが来てもおかしくない、と見ています。これは私たちの見立てであって、行政の予告ではありません。
怖いのは、罰そのものではありません。水素は応用の範囲が広く、関わる事業者も多い。だからこそ、表示の問題ひとつで業界全体が信用を失えば、失うものが大きすぎます。私たちはこの分野の可能性に賭けています。だからこそ、惜しいのです。
ですからこの本は、警告として書きました。ただし、誰かを名指しするためではありません。特定の会社も、商品も、人も、この本には出てきません。責めるために書いたものではないからです。
目指しているのは、ひとつだけです。事業者が自分でリスクに気づき、自分でWebサイトやSNSを直せる状態にすること。そのための手引きです。読んで終わりではなく、直すために引ける形にしました。
水素業界をよくしたい。盛り上げたい。もっと多くの人に、正しく広めたい。いつか日本を、世界に誇れる健康大国にしたい。それを、たくさんの人と分かち合いたい。そういう思いでつくりました。
PART
2026年8月現在、水素業界に、いま何が起きているのか
第1部で、これから確認すること
一斉摘発は目前かもしれない。
CHAPTER 1
この章の結論だけ、先に
Webサイトを見直し、法令遵守のためのチェックをしましょう。
これまで、水素吸入にまつわる「危ない」という話は、業界の内側で交わされる立ち話のようなものでした。出所のはっきりしない、確かめようのない話。だから売る側は「うわさに過ぎない」と考えることができました。その前提が、崩れました。
2026年、体内での水素爆発のリスクを正面から扱った査読論文が、国際的な学術誌に掲載されました。この論文には固有の識別番号(PMID 41489350)が振られており、誰でも、いつでも、この番号ひとつで本文にたどり着けます。なお、論文の題は「予防可能な(Preventable)」という語で始まります。水素が危ないからやめろ、という主張ではなく、管理を欠いたときのリスクは予防できる、という安全側からの指摘です。
出典:The International journal of risk & safety in medicine/Preventable in-body hydrogen explosions from high-concentration H₂(PMID 41489350)/2026年
公的な記録は、これだけではありません。飲料用の水素水生成器について、消費生活用製品安全法第35条第1項の規定に基づいて報告された重大製品事故が、火災等12件として公表されています。公表は2022年、公表主体は消費者庁です。誰かの体験談ではなく、法律に基づいて届け出られ、行政が公表資料として出した記録です。
出典:消費者庁/消費生活用製品の重大製品事故:水素水生成器(飲料用)で火災等(10月7日)/2022年10月7日 https://www.caa.go.jp/notice/entry/030502/ /https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_221007_01.pdf
事故の中身を、これ以上追う必要はありません。この節で押さえるのは一点だけです。この業界のリスクは、もう「確かめようのないうわさ」ではなく、「番号で引ける記録」になった。それだけです。
記録は、ひとりでに残るわけではありません。誰かが受け取り、集計し、公表するから記録になります。水素業界について言えば、その役目を担っているのが消費者庁と国民生活センターです。この二つの機関は、これから見はじめるのではありません。すでに、見ています。
消費者庁は「事故情報データバンク」で事故報告を集め続けています。業界紙の報道の中でも、そこへの事故報告に触れ、水素吸入器のあり方が問われる段階にある、と指摘されています。
出典:(業界紙記事の要約・当サイト収録のニュース記事)
※この段落は業界紙記事の要約にもとづくものです。消費者庁「事故情報データバンク」に登録された個別事案(件名・受付年月日・危害内容)そのものは、当サイトに収録がありません。
国民生活センターは、水素製品を実際に測って公表した実績があります。2016年12月15日、容器入り水素水及び水素水生成器についての商品テスト結果を公表しました。中身は第3章で扱います。ここで押さえるのは、そういう仕組みが実際に水素製品に対して動いた、という事実だけです。
出典:国民生活センター「容器入り水素水及び水素水生成器(pH等についての商品テスト結果)」2016年12月15日公表 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20161215_2.html /当サイト収録(水素業界ニュース)
そして、制度に基づく公表も、番号で固定された論文も、取り下げが効きません。担当者の気分で消えるものではないという点で、両者は同じです。
かつて、サイトを読むのは人でした。人には限界があるので、「小さい会社の古いページ」は、事実上、見られずに済んでいました。その前提が、崩れました。いま公開とは、全ページを機械にまるごと渡すことです。トップページも、何年も前のキャンペーンページも、区別なく同じ一覧に並びます。機械には「大手から順に見る」という発想がありません。その結果、水素業界によくある薬機法違反の表現は、いま完全に筒抜けになっています。拾われるかどうかを決めるのは、気づかれやすさではなく、文字として残っているかどうかです。「うちは小さいから」「あれは昔のページだから」は、もう通用しません。
もう、情報は集められたあとです。ここで問われるのは、集められてしまった事実をどう受け止めるかです。まず、いまの自分たちの表示を見て、直すべきところがあるなら、それを直すべきところだと認める。そのうえで、正しい形に作り直す。順番はこれ以外にありません。知らないうちに違反してしまうことは、正直、あると思います。条文は数が多く、言い回しも独特で、誰もが最初から全部を知っているわけではない。ただ、法律がある以上、「知らなかった」は理由になりません。社会の中で商売をするというのは、そういうことです。だからこそ、気づいたその場所から、すぐに直す。気づいたところから順に、一つずつ訂正していく。それが、いま自分たちにできる、いちばん確実な備えです。
では、AIは具体的にどうやってサイトを読み、どの一文を拾うのか。その具体は、次の第2章がまるごと引き受けます。
CHAPTER 2
この章を3行で
この章の結論:問題は「誰かに見つかるか」ではない。すでに、読める形で置いてある、ということだ。
ウェブサイトを公開するとき、私たちは無意識に2つのファイルを一緒に置いています。robots.txt と sitemap.xml です。制作会社に任せていれば、まず入っています。入っていないほうが珍しい。
この2つが何をしているか、正確に見てみます。当サイト(水素&健康業界AIインサイト)の robots.txt には、こう書いてあります。
そしてサイトマップには、当サイトの場合、3,943件のURLが列挙されています。これは「探してください」ではありません。「一覧を差し上げます」です。機械の側は、リンクをたどって迷子になる必要すらない。最初から全部の住所を受け取っています。
出典:当サイトの公開ファイル /robots.txt(記載内容:User-agent: * / Allow: / / Sitemap の指定)、および /sitemap.xml(列挙URL数 3,943件・当編集部による実測)。
ここで、多くの方が「うちはそんな設定にしていない」と思われるかもしれません。ほぼ確実に、しています。この設定は特殊なものではなく、検索されたいサイトの標準設定だからです。むしろ、これを外すと検索結果に出なくなります。つまり私たちは、集客のために、自分から「全ページを機械に開放する」と宣言している。それが公開という行為の中身です。
人がサイトを読むときは、トップページを見て、気になったページを開いて、途中で飽きます。10ページも読めば多いほうです。だから事業者の側にも、「奥のほうのページは、まあ見られないだろう」という感覚が残ります。3年前に書いたブログ記事、代理店向けに置いた素材ページ、キャンペーン終了後もURLだけ残っているLP。──あのあたりは、実質的に無いのと同じ。そう思ってしまう。
機械には、その感覚がありません。機械にとって、トップページと3年前のブログ記事は同じ1件です。順番も、重みも、飽きもない。3,943件あれば3,943件を読み、テキストとして保存します。しかも、読んだあとが違います。人は読んで忘れますが、機械は読んで並べます。「疾病名が入っている文を全部出せ」と言われれば、出せる形にして持っている。
この差が、いま何を意味するか。──「うちのサイトのどこかに、まずい一文が残っているかもしれない」という不安が、事業者の側では探し出せない不安であるのに対し、外から見ると一覧にできる事実になっている、ということです。守る側だけが全体を把握できていない。この非対称が、この章のすべてです。
当編集部は、水素関連の学術論文を機械的に収集しています。現在の収録は4,084件、世界3,606機関、対象年2006〜2026年、うち日本の機関は237機関です。これは、人が1件ずつ探して積み上げた数ではありません。機械が集めた数です。
出典:当サイトの研究マップページ掲載の収録件数。当編集部による、研究データ内の年別実数の再集計(2006年3件〜2026年147件・合計4,084件)と一致することを確認済み。なお件数は研究量であり、効果の有無・大小を示すものではありません。
さらに私たちは、収集した記事の文章に対して、効能の断定表現が入っていないかを機械で判定する仕組みを運用しています。この仕組みは、たとえば「〇〇によると改善する」のように誰かの発言として引用された効能表現と、出どころを示さずに自分の断定として書かれた効能表現とを分けて扱います。後者のほうを重い警告として扱う設計です。加えて、「効能表現が無かった」場合と「そもそも判定できなかった」場合を、同じ表示にしないようにしています。
ここで強調したいのは、技術のすごさではありません。逆です。これは、特別な技術ではないということです。取り立てて大きな組織でなくても、専門の研究所でなくても、この程度のことは動かせる。現に、私たちのような小さな編集部が動かしています。
ということは、こう考えるのが自然です。──同じことを、他の誰かがやっていない理由はない。
※行政機関が実際にこうした機械的な巡回・照合を行っているかを示す資料は、当サイトに収録がありません。ここで述べているのは、技術的に誰にでもできるという点までです。
この本を読んでくださっている方の中には、社員数人の会社の方も、ひとりで代理店をされている方も、制作を請け負っているだけの方もいらっしゃると思います。そういう方から、いちばんよく聞く言葉があります。
「うちみたいな小さいところまでは、さすがに来ないでしょう」
この感覚には、ちゃんとした理由があります。人が調べる場合には、実際そのとおりだったからです。人には時間の上限があります。調べる人数にも限りがある。だから、影響の大きいところ、売上の大きいところ、目立つところから見ていく。それが合理的でした。小さい会社が後回しになるのは、意地悪ではなく、単に順番の問題だったわけです。
この前提が崩れたのは、調べる側が人だけではなくなったからです。
機械にとって、1ページを読む手間はほぼ一定です。大手のトップページも、個人サイトの5年前の記事も、処理としては同じ1件。だから「大きいものから順に」という発想自体が発生しません。むしろ、条件に合うものを全部並べるほうが自然な作業になります。
そうすると、こういう逆転が起きます。人が調べていた時代は、大きい会社ほど目立ち、危なかった。機械が並べる時代は、大きい会社は法務チェックを通っていて、小さい会社の古いページのほうが引っかかりやすい。規模は、守りではなく、むしろ弱点の側に回っている可能性がある。
もうひとつ、見落とされがちなことがあります。それは、並べた一覧を作れるのは行政だけではないということです。同じ条件で並べることは、競合他社にもできます。取引が終わった元代理店にもできます。記事を書きたいライターにもできます。消費者団体にもできます。──そして、そうやって作られた一覧は、当事者の目に触れないところで先に出来上がります。「指摘が来た」と思ったときには、たいてい、一覧はもう存在しています。
薬機法まわりの表現は、機械にとってもっとも拾いやすい部類に入ります。理由は単純で、条文と行政の資料が、どういう表現が問題になるかをかなり具体的に示しているからです。
当サイトの法令ページには、次のような整理を収録しています。
出典:当サイト「薬機法・景品表示法 早わかり」ページ収録の整理より。薬機法は e-Gov 法令検索(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律・335AC0000000145)、および厚生労働省「医薬品等適正広告基準」(薬生監麻発0929第5号/平成29年9月29日)を出典として掲載。
さらに具体的な話をします。当サイトには、危険ワード・ライブラリという一覧を収録しています。分野ごとに、どういう言葉が危ないかを危険度3段階で整理したものです。たとえば、がん・循環器・アレルギー・神経の分野で使われる断定表現は危険度3(確実にNG)、関節・睡眠・美容・代謝の分野の表現は危険度2(高リスク)といった整理になっています。水素業界に固有のものとしては、「悪玉活性酸素を除去」「抗酸化で病気予防」、および「好転反応」「毒素が出ている」を危険度3として挙げています。
出典:当サイト「薬機法・景品表示法 早わかり」ページ収録「危険ワード・ライブラリ」。危険度は当サイトの整理であり、行政の公式な区分ではありません。
ここが重要なところです。──危ない言葉の一覧は、もう公開されている。私たちが公開していますし、同様の整理は他にもあります。ということは、「一覧に載っている言葉が、自社サイトの何ページ目に何回出てくるか」を数える作業は、もう手作業ではありません。一覧と、全ページの本文。この2つがあれば、突き合わせは自動でできます。
そして先ほど確認したとおり、全ページの本文は、すでに渡してあります(図2-1-1)。
ここまで読んでも、多くの方は、まだ自分の話だと感じないはずです。それには理由があります。直接的な表現は、もうほとんどの会社が消しているからです。「がんが治る」とトップページに書いている会社は、さすがに、そう多くありません。
問題は、消したあとに何を置いたか、です。よくあるのは、次のような置き換えです。
つまり、多くの現場でおこなわれた「対策」は、言い方を柔らかくする対策でした。機械にとって、この対策はほとんど意味がありません。柔らかい言い方も文字だからです。むしろ、体験談・監修コメント・グラフは、それぞれ形式が決まっているぶん、見つけやすいとさえ言えます。
最後に、この節でいちばん誤解されやすい点を書いておきます。今日まで何も言われていないことは、問題がないことの証明にはなりません。第1章で見たとおり、公表という行為は、制度が動いた結果としてあとから出てきます。順番としては、まず状態があり、次に指摘があり、最後に公表がある。指摘が来ていない段階は、状態が無い段階ではなく、まだ順番が来ていない段階です。
そして、この本の目的はここにあります。指摘が来る前に直せば、それはただの更新作業です。来てから直すと、同じ作業が「対応」になります。作業の中身は変わりません。変わるのは、直したことが誰の記録に残るか、だけです。
なお、本書は行政が機械で監視しているという主張はしていません。その裏づけは当サイト内になく、【要出典】として空けたままです。それでも危機の中身は変わりません。危機は「誰かが見ているかもしれない」ことではなく、すでに読める形で置いてあること自体だからです。
CHAPTER 3
この章を3行で
この章の結論:私たちは一度、表示の問題で負けたのに、効果の問題で負けたと思い込んでいる。
2016年12月15日、独立行政法人 国民生活センターが、商品テストの結果を公表しました。タイトルは「容器入り水素水及び水素水生成器(pH等についての商品テスト結果)」です。
調べられた対象と項目は、次のとおりです。
| 区分 | 内容 | 意味するところ |
|---|---|---|
| 対象① | 容器入り水素水 24銘柄 | 1銘柄や2銘柄ではなく、市場に出ているものをまとめて調べている。 |
| 対象② | 水素水生成器 7銘柄 | 飲料そのものだけでなく、機器も同時に対象になっている。 |
| 測定項目 | 溶存水素濃度/pH/容器開封後の保持性 | いずれも「測れば数値が出る」項目である。主観や体感は入らない。 |
| 公表された内容 | 容器入りの多くで表示どおりの水素濃度を保てていない実態 | 問われたのは、書いてある数値と、実際の数値との差である。 |
| あわせて整理 | 消費者が「水素水」「水素濃度」表示を読み解く際の注意点 | 読み手の側に、表示を疑う視点が渡された。 |
出典:独立行政法人 国民生活センター「容器入り水素水及び水素水生成器(pH等についての商品テスト結果)」2016年12月15日公表 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20161215_2.html /当サイト収録。
この公表について、業界の中でいちばん多く語られてきた要約は、たぶんこうです。──「水素水は効かない、と国に言われた」。
けれど、公表された内容をそのまま読むと、そうは書かれていません。測定されたのは溶存水素濃度・pH・容器開封後の保持性です。これは、効果の有無を判定する項目ではありません。「書いてある濃度が、実際に入っているか」「開けたあと、どれだけ保つか」を測る項目です。
つまり問われたのは、効き目ではなく、表示の正確さでした。
この違いは、感情的にはささいに見えて、実務的には決定的です。なぜなら、対策がまったく変わるからです。
2016年以降、業界の多くは前者に向かったのではないでしょうか。私たちはそれを責める立場にありません。当時、公表の中身より先に「効かないらしい」という要約が広まったのだとすれば、それに反論したくなるのは自然なことです。ただ、反論の方向が、法令上いちばん危ない方向だった。そのことだけは、いま確認しておく必要があります。
ここから先は、構造の話です。先に断っておきますが、「2016年の公表のあと、業界の売上や事業者数がどう変化したか」を示す統計を、私たちは持っていません。当サイト内に収録がないため、数字では語りません。この節は、数字ではなく、伝わり方のしくみの話として読んでください。
そのうえで、伝わり方には、はっきりした型があります。
公表資料は、対象を限定して書かれます。今回で言えば、容器入り24銘柄と生成器7銘柄。調べていないものについては何も言っていません。ここまでは正確です。
ところが、資料が資料のまま読まれることは、ほとんどありません。まず記事になり、記事が見出しになり、見出しが会話になります。この過程で、限定条件から順に落ちていきます。落ちる順番も決まっています。銘柄名が落ち、測定項目が落ち、調査時点が落ちる。最後に残るのは、いちばん短い一言です。
そして、いちばん短い一言は、たいていカテゴリ名でできています。「水素水は」。
ここに、この業界にとって残酷な非対称があります。公表は個別に行われ、要約はカテゴリで行われる。だから、調べられていない会社にも要約は届きます。表示を正確に書いていた会社にも届きます。そもそも容器入りを売っていない会社にも届きます。届いたあと、「うちは調べられていません」と説明しても、説明は要約より短くならないので、追いつけません。
もうひとつ、見ておきたい動きがあります。要約に巻き込まれたとき、いちばん強く反発するのは、たいていまじめにやっていた会社です。当然です。事実と違うのですから。
問題は、その反発が向かう先です。「効かないというのは誤りだ」と言いたくなる。そして、それを証明しようとして、効果の話を始めてしまう。──効果の話を始めた瞬間に、こんどは薬機法の側に入ります。表示の問題で受けた傷を、効能の主張で埋めようとすると、より重い問題に足を踏み入れることになる。
第2章までで見たとおり、いま置いてある文章は、まとめて読める形になっています。2016年前後に、反発として書かれた文章が、いま残っているとしたら。──それは、当時の気持ちとしては正しくても、いまの状態としては危ない。この本が第7章でページ別の点検を扱うのは、そのためです。
この節も、はじめに正直に書いておきます。「水素は効かない」という評価が現在どれだけ検索結果に残っているかを示すデータを、私たちは持っていません。当サイト内に収録がないため、件数や順位では語りません。
そのうえで、確実に言えることがあります。──2016年の公表資料は、いまも公開されているということです。第1章で確認したとおり、公的な公表資料は、取り下げを前提に作られていません。10年前の資料が、10年後の今日も、同じURLで読める。それが公表という制度の性質です。
ここに、第2章の話が重なります。公開されているものは、機械にとって「いま存在するもの」です。2016年のページも、今日書いたページも、同じ1件として扱われます。日付は属性のひとつにすぎず、古いから読まれない、ということはありません。
ここで、時間の経ち方が2種類あることに注意してください。
この非対称が意味するのは、直した会社ほど損をしているということです。直したことは、直した会社の中にしか記録されていません。一方、直す前の評価は、外側に記録されたままになっている。
そして、これは今回の危機にそのまま当てはまります。第1章で見た2022年の公表と2026年の論文も、同じ性質を持っています。いま何もしなければ、10年後に同じことを言うことになります。「あのときのイメージが残っていて」と。
だから、この本の提案はひとつだけです。──外側の記録は動かせません。動かせるのは、こちら側の記述だけです。であれば、こちら側を、いま、正確な状態にしておく。それ以外に、10年後に見せられるものはありません。
CHAPTER 4
この章を5行で
この章の結論:今回は、商品を持っていない人まで当事者になる。だから、業界ごと沈み得る。
第3章で見たとおり、2016年に調べられたのは商品そのものでした。溶存水素濃度、pH、開封後の保持性。──これらを測られて困るのは、その商品を作った会社と、売った会社です。記事を書いた人は測られませんし、サイトを作った会社も測られません。だから前回、業界の外周にいた方々は、ほとんど痛みませんでした。
今回は、性質が違います。いま問題になっているのは、何と書いてあるかです。そして、書くという行為は、商品を持っていなくてもできます。むしろ、商品を持っていない人のほうがたくさん書いている、というのが今日のウェブの実情です。
ここで、当サイトの法令ページに収録している整理を一つ挙げます。広告に当たるかどうかは、3つの要件で判断されるという整理です。
出典:当サイト「薬機法・景品表示法 早わかり」ページ収録「広告該当性の3要件」より。
この3つを、よく見てください。どこにも「商品を売っている人が書いた場合に限る」とは書かれていません。書き手が誰かではなく、書かれたものが3つの要件を満たすかどうかで判断される、という構造です。
だから、こうなります。──比較サイトの記事も、ブログのレビューも、代理店が独自に作ったLPも、条件を満たせば広告として扱われ得る。「うちは商品を持っていないから関係ない」という理屈は、ここでは効きません。
| 論点 | 前回 ── 商品の話 | 今回 ── 表示の話 |
|---|---|---|
| 問われたもの | 溶存水素濃度・pH・開封後の保持性 | 何と書いてあるか(明示・暗示を問わない) |
| 対象になる人 | 商品を作った人・売った人 | 書いた人・作らせた人・出した人 |
| 必要な設備 | 製造設備・在庫が必要 | 不要。文章があれば成立する |
| 逃げ場 | 「うちの銘柄ではない」が成立した | 「うちの商品ではない」は理由にならない |
| 関係する法律 | 主に表示・品質の問題として扱われた | 薬機法・景品表示法・ステマ規制・特定商取引法ほか |
「ルールが変わった」と書きましたが、感覚的な話ではありません。当サイトに収録している範囲で、はっきりした変更が3つあります。順に見ます。
景品表示法には課徴金の規定があります。当サイトの整理では、景品表示法 第7条が措置命令、第8条が課徴金にあたり、課徴金の算定は3%として掲載しています。
そして、優良誤認について重要な点があります。景品表示法 第5条第1号(優良誤認)は、故意・過失を問いません。知らなかった、悪気はなかった、下請けが勝手に書いた──それらは、成立の有無そのものには影響しません。
さらに第7条第2項には、不実証広告規制があります。これは、表示の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められる、という仕組みです。「根拠を持っていない」ことが、そのまま問題になり得る、ということです。
出典:当サイト「薬機法・景品表示法 早わかり」ページ収録の景品表示法の整理(第5条第1号 優良誤認/第5条第2号 有利誤認/第7条 措置命令/第7条第2項 不実証広告規制/第8条 課徴金3%)。法令本文は e-Gov 法令検索(不当景品類及び不当表示防止法・337AC0000000134)、および消費者庁の課徴金制度説明資料を出典として掲載。
薬機法についても、当サイトは第75条の5の2の課徴金納付命令を収録しています。算定は売上額の4.5%、施行は令和3年8月1日です。
ここには、実務上とても大事な但し書きがあります。当サイトの整理では、第68条(未承認医薬品等の広告禁止)に違反した広告は、課徴金の直接の対象外とされています。ただし、指示・命令等の対象にはなります。──つまり「課徴金が来ないから軽い」ではありません。経路が違うだけです。
出典:当サイト「薬機法・景品表示法 早わかり」ページ収録の薬機法の整理(第66条/第68条/第75条の5の2 課徴金 売上額4.5%・令和3年8月1日施行)。法令本文は e-Gov 法令検索(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律・335AC0000000145)を出典として掲載。
3つめが、いちばん新しい変更です。令和5年(2023年)10月1日、景品表示法の第5条第3号にもとづく指定告示が施行されました。対象となるのは、当サイトの整理では「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」です。
平たく言えば、広告なのに広告に見えない表示です。
ここで、多くの解説が省いてしまう重要な点を、正確に書いておきます。当サイトの整理によれば、この規制の名あて人は「事業者(広告主)」です。依頼を受けたインフルエンサー等の第三者自身は、本規制の名あて人ではありません。ただし、広告主側の責任として問われる構造になっています。
そして、適用される媒体はSNSやレビューに限りません。テレビ・新聞・雑誌等も含まれます。加えて、アフィリエイト記事・比較サイトも、事業者の表示と評価される場合は対象になり得ます。
出典:当サイト「薬機法・景品表示法 早わかり」ページ収録のステマ規制の整理(景品表示法 第5条第3号の指定告示/令和5年10月1日施行/名あて人は事業者(広告主)/適用媒体はSNS・レビューに限らない/アフィリエイト記事・比較サイトも事業者の表示と評価される場合は対象になり得る)。消費者庁のステルスマーケティング規制に関する掲載ページを出典として掲載。
この節が、この章の核心です。そしてここは、雑に書くと不正確になるところなので、慎重に進めます。
よくある説明は、「ステマ規制ができたから、アフィリエイターも責任を問われる」というものです。この説明は、正確ではありません。前の節で見たとおり、ステマ規制の名あて人は事業者(広告主)だからです。
では、外周にいる方々は安全なのか。──そうではありません。ここが大事なところです。届く経路が、ステマ規制ではないというだけです。
当サイトは、次の2つの事例を収録しています。
出典:当サイト「薬機法・景品表示法 早わかり」ページ冒頭の事実欄より(代理店の措置命令・刑事手続の事例/アフィリエイト広告作成者の書類送検の事例)。事案の詳細・当事者名には本書では立ち入りません。
つまり、実際に起きたことは「ステマ規制で全員が対象になった」ではなく、それぞれ別の法律・別の経路で、外周の人にも手続が及んだということです。
ここを図にします。同じ「対象になる」でも、経路が違えば、対策も違うからです。
法律ごとの経路を全部覚えるのは、正直に言って大変です。ですので、現場では次のように考えるのが早いと思います。
この3つのどれか1つでも当てはまるなら、この本は自分の話です。──そして、この業界で仕事をしていて、どれにも当てはまらない人は、ほとんどいません。
まず、単純な算数の話です。前回、痛みを受けたのはメーカーと販売店でした。仮にその数を1とします。今回は、そこに代理店・広告会社・制作会社・記事の書き手・配信する人が加わります。数は何倍にもなります。
数が増えると、質的にも変化が起きます。関係者が増えるほど、責任の押し付け合いが始まるからです。
この4つは、どれも本当のことかもしれません。ですが、外から見ると、業界の内部で責任を押し付け合っている光景に見えます。そして、この光景こそが、業界の信用をいちばん早く壊します。
前回、この光景はほとんど発生しませんでした。関係者が少なく、責任の所在がはっきりしていたからです。今回は違います。関係者が多いということは、押し付け合う相手が多いということでもあります。
ここまで書いてきて、暗い話ばかりだと感じられたかもしれません。ですが、この構造には、明るい裏返しがあります。──押し付け合いが起きるのは、全員が同時に当事者になるからです。そして全員が同時に当事者だということは、全員が同時に直せる、ということでもあります。
誰か1社が直しても業界は変わりません。けれど、いま渡されている素材、いま出ているLP、いま残っている記事。それを、それぞれの持ち場で直すことは、全員が今日からできます。これが第2部の内容です。
第1部の最後の節です。ここまで書いてきたことを、いったん引き受け直します。
私たちが確認してきたのは、次のことでした。事故が公的な記録になり、行政がすでに公表資料を出していること(第1章)。公開した文章はまとめて読める形にあること(第2章)。前回は表示で負けたのに、効果の話で反撃してしまったこと(第3章)。そして今回は、商品を持っていない人まで当事者になること(本章)。
これらは全部、水素についての話ではありません。ひとつも、水素という物質の性質についての話をしていません。全部、私たちがどう書いてきたかについての話です。
だから、こう言えます。──水素は終わりません。物質は、誰が何を書こうと変わりません。研究は、私たちの業界の売り方とは無関係に進みます(第5章で見ます)。終わるとしたら、終わるのは物質ではなく、いまの売り方をしている私たちのほうです。
これは絶望ではなく、むしろ逆です。もし水素そのものに問題があるなら、私たちにできることはありません。けれど、問題が売り方にあるなら、直せます。しかも、誰の許可もいりません。今日、自社のページを開いて、一文を書き換えればいい。それだけのことです。
CHAPTER 5
この章を3行で
この章の結論:素材は本物だ。だからこそ、売り方で殺してはいけない。
当サイトは、水素に関連する学術論文を機械的に収集し、「研究マップ」として公開しています。現在の収録は、次のとおりです。
出典:当サイトの研究マップページ掲載の収録件数。当編集部が保有する論文データの年別実数を独立に再集計した結果(2006年3件〜2026年147件・合計4,084件)と一致することを確認しています。件数は研究量であり、効果の有無・大小を示すものではありません。
この4,084件を、年ごとに並べたものが次の図です。
この図から読み取れることは、多くありません。読み取れることだけを、正確に書きます。
3つめが、この節でいちばん大事な点です。──日本の業界がどう言われようと、世界の研究の量は減っていません。むしろ増えています。これは、私たちの売り方とは完全に独立した動きです。
もう一つ、地域の分布も見ておきます。当サイトの研究マップに掲載している、上位の国と機関数・論文数(延べ)は次のとおりです。
| 順 | 国 | 機関数 | 論文数(延べ) |
|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 1,208 | 2,617 |
| 2 | 米国 | 350 | 901 |
| 3 | 日本 | 237 | 857 |
| 4 | ドイツ | 246 | 499 |
| 5 | インド | 224 | 354 |
| 6 | 台湾 | 71 | 242 |
| 7 | ロシア | 107 | 222 |
| 8 | 英国 | 66 | 179 |
| 9 | オーストラリア | 43 | 121 |
ここでも、読み取れることだけを書きます。──研究は特定の一国に偏っておらず、複数の国で並行して行われています。日本は機関数で3位、論文数(延べ)で3位です。これは「日本の水素研究が優れている」という意味ではありません。研究が行われている量の話です。
そして、私たちが本当に受け止めるべきことは、たぶんこれです。──4,084件の研究は、私たちの広告のために行われたものではありません。研究者は、私たちのLPを書くために実験しているわけではない。にもかかわらず、その積み上げの上で商売をさせてもらっている。それが、この業界にいるということの意味です。
ここで、第1部全体を一度整理します。第1章から第4章まで、私たちが確認してきた問題は、次のようなものでした。
この4つを、もう一度よく見てください。どれ一つとして、水素という物質そのものの問題ではありません。事故は機器の安全設計の問題であり、公表は表示の問題であり、責任範囲は制度の問題です。物質の性質を問題にしている項目は、一つもない。
つまり、こういうことになります。私たちは、素材には問題がないのに、説明の仕方で危機を招いている。
これは、意地悪な話ではありません。むしろ、まじめさから始まっていることが多い。順番はたいてい、こうです。
④が分岐点です。「わかりやすくする」と「言っていないことを足す」は、実務上とても近い。だから、悪意なく越えてしまう。そして越えた瞬間に、それは薬機法・景品表示法の対象になり得る表現に変わります。
ここが、本書が第2部で扱うことの中心です。──わかりやすく、かつ、越えない。この2つを同時に満たす書き方は、ちゃんとあります。難しくはありません。ただ、知らなければ書けないだけです。
第2部は、読み物ではなく引くためのものです。自社のページの一文を持ってきて、その言葉が法律のどこに当たるのかを確かめ、安全な書き方に直すところまでを、2章・16節・約8万字で扱っています。以下は、その見出しの全部です。
CHAPTER 6
各節に、✕NG表現 → §根拠 → ✓安全な書き方の辞書、よくある誤解、自社の一文を通すための判定フローが入っています。
CHAPTER 7
言葉の種類ごとに引ける辞書です。各節に、✕NG表現 → §根拠 → ✓安全な書き方と、実際に問題になりやすい箇所が入っています。
第2部の全文(約8万字)と、A4・印刷用のPDF版は、無料の会員登録でそのままお読みいただけます。費用はかかりません。
続きを読む(無料会員登録)すでに会員の方は、ログインするとそのまま続きが開きます。
一斉摘発は目前かもしれない。薬機法違反を今すぐやめて、Webサイトや広告を修正しよう。
作成元 水素&健康業界AIインサイト 編集部
https://h2navi.jp/
「水素&健康業界AIインサイト」は、水素と健康に関する研究・行政資料・業界動向を、効能をうたわずに記録し続けている情報サイトです。順位づけや推奨は行いません。掲載する事項は出典を明示し、根拠が確認できないものは【要出典】として空けたまま残しています。本書もその方針で作りました。
本書は更新されません。制度は改正されます。条番号・施行日・ガイドライン名は、必ず出典元の最新版をご確認ください。更新は本書ではなく、上記サイトの各ページで行っています。
運営 スマートマーケティング株式会社(2011年設立)
https://www.smartmarketing.co.jp/
本書は、水素業界の事業者に向けた一般的な情報提供です。法的助言ではありません。特定の企業・製品・人物・団体の違法性を名指しで断定するものではなく、水素の効果効能も主張しません。個別の広告・表示・取引の適法性は、所管官庁の最新の公表資料や弁護士等の専門家にご確認ください。